En famille 雛燕は、眠夢さんの掲示板の2月16日(日)20時32分の木葉さんの記述の引用です。

 自 序
不束者の花枝を、『新少女』紙上に御紹介致しました処、意外に御贔負にして下さいまして、まことに有難く御禮を申上る次第で御座います。其後続々是非家(うち)の娘にしたいとの御申出が御座いましたので、此度いよいよ羽仁先生の御仲立で、皆様に養女に差上げる事に致しました。何卒お人形と一所に、毎日お側(そば)に置いて、末永く御可愛(かはい)がり下さいます様に、花枝に代って御願ひ致して置きます。
 大正六年十二月六日
           素 川

雛 燕
    五 来 素 川
アミの悪戯
 仏蘭西は巴里の都、国も世界の花なれば、都も地上の花である。其の花の都の東の入口、ベルシーと呼ぶ城門の側(ほとり)、六月の或る土曜日の午後三時頃、馬車や荷馬車が四通に居並び、珠数(じゅず)繋ぎになつて税関役人の検査を待って居る。材木を積んだ大八車、石炭や煉瓦を…(以下略)

奥付

大正六年十二月二十日印刷
大正六年十二月廿五日発行
定価金五十銭
著作者 五 来 素 川
発行者 羽 仁 吉 一
(中略)
発行所 東京雑司ヶ谷 婦人之友社


 「雛燕」地名等の対照です。他の訳では程度問題でしょうが、本作ではこのとおり和風…
 今回の表記は二宮訳です。

アンヴァリード=招魂社
城塞の大通り=大瀬田圃 ※直前に出てくる「オーセール」のことかも
シャロンヌ=田町
アミアン=網井
聖堂に近いリブレット街=緑町の寺院(てら)の側
マロクール=宮古
クレイユ=呉井
アミアン=網野
ピキニー=引毛
フレクセル=櫻井
サン・ピポワ=白岡
カンブレー=神部(かんべ)
アブリーヌ兄弟社=岡野商会
マロクール工場=宮古麻織物会社
ダッカ=田塚
デラ=照井
トラブニク=鳥部
ブーソヴァチャ=畑野
ルーアン=坂本

 おまけの人名対照その2

弟のオメール=舎弟の文吉  ※フランソワーズの弟
ライード=君ちゃん     ※ノワイエルが呼んだルームメイト
ジャック=虎吉       ※サン・ピポワ工場構内でヴュルフランさまがあいさつをかえした工員
パスカル=三之助      ※同上
ヴィルジニー=安川     ※マダム・ラシェーズの店の売り子
フィルズ=蛭戸(ひるど)  ※ダッカのイギリス人神父
ルクレール=呉野(くれの) ※ダッカのフランス人神父
ベルシェ=別所       ※エドモンとマリが知り合ったお宅
ルセール=小栗       ※ダッカのエドモンの友人
マッカーネス=牧村     ※デラの神父
アミアンの銀行家=井口

 「雛燕」目次

アミの悪戯(いたづら)
孝行娘
名高いお医者
引越
馬市場
永劫(なが)の別れ
ひとり旅
邂逅(めぐりあひ)
途(みち)すがら
盲目(めくら)の旦那
酔ひどれのお六
手車押し
通辯役(つうべんやく)
意外のお手柄
身の上ばなし
サンタクロース
濡衣(ぬれぎぬ)
泥酔者(よひどれ)の代り
秘密の手紙
夢の王宮(みや)
女先生
悲しい報知
火事がもとで
大團円

ペリーヌ=花枝
マリ(スチーブンソン)=島崎家の令嬢萩子
エドモン=新太郎
パリカール=アミ
ビルフラン=新右衛門
パンダボワーヌ=橋本
マルセル=玉吉(たまきち)
シモン荘=三五郎空地
シモンじいさん=焼石(やけいし)
飴屋さん=飴屋の小父さん
侯爵夫人カロリーヌ=お局(つぼね)様
ガストン=前垂(まえだれ)のお爺さん・無口爺さん・無口の小父さん
サンドリエ=斉木先生
ラ・ルクリ=お浅 ※(焼石の)飲み仲間の茂助(もすけ)のおかみさん・紙屑買ひ
オーレリー=花
ロザリー=お里
ファブリ=古川(ふるかは)
ベンディット=溝澤(どぶさは)
フランソワーズ=お松 ※居酒屋と乾物屋
ゼノビ叔母さん=お虎伯母さん
ラ・ノアイエル=お六
リュション先生:なし ※手術のくだりがないのです。
タルエル=黒塚(くろづか・こくづか)
テオドール=橋本鉄雄(新右衛門の弟の子)
ブルトヌー夫人=鉄雄のお母様(新右衛門の妹) ※混乱してる…私のチェックミスかも。
カジミール=古川勝弥(新右衛門の妹の子)
スタニスラス:なし
モンブール=細野
ラ・シューズ夫人=「玉川」の女主人
オヌー=小野
セバスチャン=政吉(まさきち)
ギョーム=喜助(きすけ)
フェリックス=平蔵
ブノア=高水(たかみづ)
チビルスばあさん=お虎婆さま
家庭教師=高山先生
ウルム:なし

五来欣造(五来素川)
政治学者、政治学博士。明治8年6月茨城県に生まれる。同33年東京帝国大学放火大学仏法科卒業後、フランス、ドイツに留学、大正3年(1914)帰国して、読売新聞主筆、明治大学講師をへて、昭和2年(1927)早稲田大学教授となった。素川と号して、俳句を能くした。昭和19年8月1日没

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